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文芸5団体の公貸権関連声明(長くてすみません)

またまた三田さんがやってくれたようです。
昨日(11/8)、日本文藝家協会をはじめとする文芸5団体が、「図書館の今後についての共同声明」を出しました。

Mainichi Interactive
共同声明:図書館貸し出し補償求める 文芸家協会など
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/news/20051109k0000m040092000c.html

YOMIURI ONLINE
文芸家協会など5団体、図書館の充実求める声明
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20051108ij21.htm

このニュースは毎日や読売の「紙の方の」新聞紙上でも掲載されていますが、どちらもネットの記事の方が内容が詳しいですので、ネットニュースをご覧になることをおすすめします。

お、著作権関係のブログでも早速このネタを取り上げられていますね。さすが。
Copy & Copyright Diaryさん、万来堂日記さん、エンドユーザーの見た著作権さん、著作権云々さん、ふっかつ!れしのお探しモノげっきさんで取り上げられていました。「図書館振興なんて言うけど、要は公貸権導入が目的なだけなんじゃないの?」という論調もあり、私も激しく首肯するところです。

つまり、この声明では、(1)図書館予算の増大、(2)図書館司書の増員と、図書館の強化を訴えた上で、最後に(3)国家または公的機関による著作者等への補償制度の確立を訴えているわけですが、これまで図書館のことを目の敵にしてきたこれらの人々(日本文藝家協会の三田さんも、日本推理作家協会の大澤さんもそうですよね?)が、なぜ今になって、図書館の強化も内容に含んだ声明を出すかが、いかにもうさんくさいわけですよ。で、(1)(2)を出して図書館から賛同を得たうえで、(3)についても図書館側の理解を得よう、そんな観測が出てくるわけです。

このことについてですが、実はこの声明、当初は日本文藝家協会と日本ペンクラブが日本図書館協会と一緒に出そうとしたものらしいのです。ところが、日本図書館協会は、2004年3月5日に、「図書館の基盤があまりにも貧しい現状では、公貸権制度の導入は時期尚早。まずは欧米並みに図書館の基盤が強化されることが先決」という内容の見解を出しています(「図書館における貸与問題についての見解」(2004年3月5日))から、到底受け入れられないわけで、難色を示したわけです。そうしたら、ということで、三田さん(とおそらく日本ペンクラブの松本佑子広報委員長)は、日本推理作家協会、日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会に接触して、著作者団体合同での共同声明ということにしたのではないかと思います。

また、聞くところによると、この声明、少し前には文案が固まっていたとかで、一部では「なぜ発表しないんだ」という声もあったらしいです。そして、「10月27日の文字・活字文化の日に発表するんじゃないの?」という観測まで出る始末。う〜ん、なぜこの時期なのかはギモンですね。

この声明で私が一番驚いたのは、日本推理作家協会が名を連ねていたことです。この協会は、公貸権制度の導入よりも、貸出猶予を主張していて、昨年文化審議会著作権分科会に出した要望書でも、「公貸権の導入にあたって、国や自治体に補償金等の財源を求めるものは、金額的にあまり実効があがらぬ恐れがあるほか、手続き的にも繁雑な作業が予想される」としたうえで、「新刊本の売れ行きは、発刊後2週間ほどでピークを迎え、6ヶ月ほどでほぼ落ち着く。いわばこの6ヶ月が、著作権者等の主たる収益回収期間なのである。この利用機会を保護するため、公共図書館に一定の貸出猶予期間(3〜6ヶ月程度)を設定するよう、法制化を進めていただきたい」(*)と書いています。
日本推理作家協会は見解を改めたのでしょうか・・・??

(*)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/04093001/002/004-4.pdfの(82)とヘッダーが振ってある文書が、日本推理作家協会の要望書です。このpdfファイルはかなり重いので、ご覧になる際にはご注意ください。

あと、今回の声明で最初に図書館予算と司書の増大を求めていることについてですが、おそらく先の日本図書館協会の声明を意識してのことだと思います。先にも述べたとおり、日本図書館協会では、欧米先進国の水準にならない限り、公貸権導入の議論を行うのは時期尚早という立場を取っています。そこで三田さんは、図書館予算と司書の増大を実現して図書館を欧米先進国並みの水準に引き上げれば、日本図書館協会が公貸権導入の議論の場に参加せざるを得ないと考えたのではないのでしょうか。

また、この声明、文芸5団体が共同して出したということにもかなり意味があります。これも伝え聞くところによりますと、文化庁は公貸権制度の導入要望につき、文芸家の団体で意見を一本化しない限り受け付けない意向を示したそうなのです。で、先に述べたとおり、日本推理作家協会は公貸権制度に消極的だったので、意見の一本化が実現できなかったのですが、この声明でようやく一本化が実現し、文化庁にあらためて要望するための環境を整えたというわけです。

公貸権制度導入推進派にとっては、文字・活字文化振興法の制定に引き続き、公貸権制度導入のためのステップをまた一歩進めたことになります。これで今後はますます公貸権制度をめぐる動向を注視する必要がありそうです。

なお、日本図書館協会は、本日付けのメールマガジンにおいて、「日本図書館協会は、共同声明で図書館への理解、協力を示されていることについては心から感謝するものであるが、「著作者等への補償制度」が「図書館の貸出しに対する補償金」との考え方をされていることについては賛成できない旨をかねてから表明している。文芸文化を護ることは、図書館も含めた国民の知的基盤にとって大事なことであり、そのために著作者、出版社など関係者との協力を強めていくものである」とのコメントを発表しています。従来の日本図書館協会のスタンスからみれば当然のコメントといえるでしょう。

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 例の「共同声明」ようやく本文が日本文藝家協会のサイトに掲載され,その全貌が明ら [Read More]

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